トークイベントLiveWireのレギュラー出演者、書評家・杉江松恋氏の発案で、初めて落語興行を手掛けたのが、2014年2月23日。

記念すべき第一弾の高座をお願いしたのは、落語立川流の重鎮・立川談四楼師匠。
落語会開催経験ゼロにもかかわらず、いきなり師匠にご相談が叶ったのは、ひとえに杉江氏のネットワークの賜物。会の開始にあたって、何かご希望の趣向はございませんかと伺ったところ、日付が変わった午前一時から始まる「本当の深夜寄席」をやってみたいとおっしゃる。

あまりに規格外の話に一瞬腰が抜けそうになった。しかし、群雄割拠する落語界に後発として船出するのであれば、むしろこれぐらいの酔狂さがないと面白くない。二つ返事で承ることにしたのでありました。

スタートしてみると、これが想像以上にトンデモナイ。
土曜から日曜に日付の変わったばかりの零時半に開場。ちょうど各線の終電時間に集合。
丑ひとつのスタートで、寅の刻までの二時間が正味。

当然、朝まで帰りの電車は無いから、そのままほぼフルメンバーで打ち上げに突入。
二十人を越える盛況、まあ賑やかなこと極まりない(笑)。
結局、明け方卯の刻を越えても興奮冷めやらずで、始発が走り出しているのにまだまだ宴会は続き、ホストの私は一滴のアルコールも口にしていなかったにもかかわらず、その日曜日丸々寝て暮らすハメに。

いみじくも「新宿落語実験室」を名乗る、我がBiri Biri寄席の“酔狂&素っ頓狂”の歴史は、この談四楼師匠の爆弾提案から始まったのでありました。

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こちらが見よう見まねで初めて作ったチラシ。まだモノクロ印刷。

背景の夜景写真は、新宿三丁目伊勢丹の交差点のもの。
イメージしたのはマンハッタンのナイトクラブのショー。目を引くためのチラシとしてはちょっと大人しすぎたかもしれないが、かといって歌舞伎町の毳毳しいネオンをバックにするのでは品がない。あくまで洒脱で都会的な会、他所とは一味ちがう落語会ですよというクールな雰囲気を出したかったので、年末の夜中、人出の少なくなった午前三時頃の伊勢丹界隈を狙って撮影に出かけたことを思い出す。

真夜中からの興行ということで、事細かに酔客向けの注意書きなどが書いてあるのも、肩に力が入りすぎている気もする(そもそも質の悪い酔客はこんな注意書きなど一顧だにしない(笑))。まあ、処女航海故のご愛嬌。初めての落語会開催ということで、色々不測の事態などを思い巡らして、カチンコチンに構えていたのである。


ちなみに当時は、まだ店名が「Live Wire Biri-Biri酒場」だった。
これはトークイベントシリーズのタイトルLive Wire(高圧電流)から、感電のオノマトペ「Biri-Biri」を抜き出したもの。それをまたそのまま落語会のシリーズ名に流用したのが、今なお続く『Biri-Biri寄席』の源流。後に、落語専用会場に転用する際に『電撃座』という名前をつけたのも、その一連の<高圧電流シリーズ>の流れを酌んだ結果なのですね。いやはや、人に歴史あり。落語会にも来歴あり。まだたった三年ほど前の話なのだが、十年ぐらい前の事のように懐かしい。


同じデザインで
第二回 2014年4月27日(日)
第三回 2014年6月22日(日)
を開催。